普通借家契約と定期借家契約の違い
不動賃貸を契約する場合、その主な契約として、普通借家契約と定期借家契約とに分けれらます。大きな違い次の4つです。
●更新の有無 ●貸主からの解約 ●借主からの解約 ●契約の締結方法
ここでは、その違いと不動産を貸し出す場合のメリット、デメリットを解説します。
普通借家契約と定期借家契約の比較表
内 容 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
契約方法 | (1)公正証書等の書面による契約に限る (2)さらに、「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない |
書面でも口頭でもよい |
更新の有無 | 期間満了により終了し、更新 されない | 正当事由がない限り更新される |
建物の賃貸借期間の上限 | 制限はない | 2000年3月1日より前の契約 ※20年まで 2000年3月1日以降の契約 制限はない |
期間を1年未満とする建物賃貸借契約の効力 | 1年未満の契約も可能 | 期間の定めのない賃貸借契約とみなされる |
建物賃借料の増減に関する特約の効力 | 賃借料の増減は特約の定めに従う | 特約にかかわらず、当事者は、賃借料の増減を請求できる |
借主からの中途解約の可否 | (1)床面積が200㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった 借主からは、特約がなくても法律により、中途解約ができる (2)上記(1)以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う |
中途解約に関する特約があれば、その定めに従う |
普通借家契約とは?
一般的な契約は、2年更新の普通借家契約で取り交わされることが多いです。普通借家契約は、契約期間1年以上で設定し、期間の制限なく定めることができます。借主保護の観点から、借主は、中途解約することが可能ですが、貸主からの解約は、正当事由がなければ認められません。
正当事由とは、おおむね以下の4つです。
●貸主が建物の使用を必要とする事情
●建物の賃貸借に関する従前の経過(家賃滞納や信頼関係の破壊など)
●建物の利用状況及び建物の現況(老朽化など)
●建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出(立ち退き料の支払いなど)
以上の事情を考慮して、正当事由の有無が判断されます。
例えば、貸主自身が「そこに住みたい、親族をそこに住まわせたい」などの理由では、貸主側の正当事由は弱く、立退料の支払いによって正当事由を補完するのが一般的です。
定期借家契約とは?
定期借家契約は、契約で定めた契約期間が終わると契約は必ず終了し、契約の更新もありません。ただし、再契約をすることは可能です。
原則として、貸主と借主の双方は契約を解除することができません。ただし、借主については、途中解約を認める条項があれば、契約を解除することが可能です。貸主がこの条項を認める場合は、違約金として一定の支払いを取り決めて置くことが多いです。
借主にとって定期借家契約のメリット・デメリットとは?
メリット
①確実に契約が終了する。
定期借家契約は、決められた期間の満了によって契約が終了します。したがって、貸主側の利用期限に沿って契約することが可能です。例えば、数年後に建物を利用する計画がある場合や数年後に建物を解体する計画がある場合などに、定期借家契約であれば安心して賃貸することが可能です。
②長期的な家賃収入の見通しがつきやすい。
定期借家契約は、貸主が借主の契約解除を認めた場合を除いて、双方の契約は期間満了まで継続します。普通借家契約に比べ、その期間中の家賃収入は、ほぼ確定することなるため見通しがつきやすくなります。ただし、借主の滞納や倒産リスク等が生じる可能性はゼロではありません。
デメリット
①入居者が契約を躊躇する。
定期借家契約での最大のデメリットは、入居者が契約を躊躇することです。借主としても将来は予測できないため、契約期間満了時の状況はわかりません。仮に借主がまだ住み続けたいという場合でも、必ず退去しなければならない定期借家契約は、不利益と考えざる得ないからです。
この結果、契約に至らず、借主が決まらないという事態になりかねません。
②相場に比べ賃料が下がる傾向にある。
定期借家契約は借主側からすると、一般的に不利な契約という認識をもっています。そのため、相場の賃料より下げて募集するケースが多いです。借主が決まらなければ、家賃も発生しないため、賃料価格については、市場や諸条件などを総合的に分析し、決定することが必要となります。
③契約の仕方や管理が面倒である。
契約の仕方ですが、定期借家契約は、必ず書面で契約を結ぶことが必要とされています。
借地借家法では「公正証書」によると例示されていますが、必ずしも公正証書でなくても書面による定期借家契約であれば問題ありません。
定期借家契約は、契約前に事前説明として、「建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了すること」書面を交付して説明しなければなりません。同じく、定期借家契約書にもその旨が記載されていなければなりません。
もし、この事前説明義務に違反すれば、定期借家契約を締結したとは認めれず、普通借家契約を締結したことになります。
次に契約の管理ですが、貸主は、契約満了の1年前から6か月前までの間に、借主に対して、契約が終了することを通知しなければなりません。この通知をしないと、契約期間が満了しても、一定期間は契約が終了しませんので、注意が必要です。
まとめ
通常の賃貸契約は、普通借家契約を利用することが大半です。
しかし、貸主側の状況によっては、定期借家契約を利用することが望ましい場合があります。
例えば、賃貸経営において、数年後に建て壊しを計画する場合などは、段階的に定期借家契約へ切り替えていくという方法も考えられます。
また、数年後の利用方法がすでに決まっている場合なども、定期借家契約を利用することにより、スムーズな利用を実現することが可能です。