不動産相続

空き家の現状と活用方法について

空き家の現状と活用方法について

数年前から空き家に関する問題がクローズアップされています。今後ますます深刻化していくことが予測され、問題の対処を迫られているのです。

これから先を見通すと、10人中8人が空き家について、避けては通れない問題と言っても過言ではありません。

今回はなぜ、空き家が問題なのかということを含め、空き家の現状と未来、そしてどのような活用があるのかを解説していきます。

空き家の現状と未来

国土交通省は、『空き家を1年以上住んでいない、または使われていない家』と定義しました。そして、この空き家が右肩上がりで今後増加すること見込まれているのです。

まず最初に、高齢者がどの程度の割合で持ち家を所有しているかというと、約8割もの割合で持ち家を所有しています。下図、総務省統計局の通り、年齢が上がるにつれて持ち家の所有比率が上がっていることがわかります。

また、空き家となる直接的な原因は、『高齢者が施設に入所した』『相続が生じた』場合などが大半を占めているものと推察されます。

つまり、全高齢者世帯の約8割もの家が次世代の子や孫に引き継がれることなるのです。加えて、少子高齢化のため次世代の人口は年々減少しています。

その点を考えると、昔は高齢者に対し子供が多かったため、一つの家を5人、6人と言った具合に、複数で相続していたのに対し、これから先は、一人で2軒、3軒の家を引き継ぐといったケースも頻繁にみられるようになるかもしれません。

※年齢別持ち家世帯率(総務省統計局引用)

2018年に総務省が発表した空き家率では、空き家率13.6%(846万戸)と過去最高を更新しました。すでに、現状で約7軒に1軒の割合で空き家になっている計算となります。

また、野村総合研究所によると2033年には、空き家率が27.3%(1955万戸)になると予測されています。近い将来は、4軒に1軒の割合で空き家になる計算となります。

 

※空き家の推移(総務省統計局引用)

空き家放置の問題点

●環境や治安の悪化

誰も住まない家を放置しておくと、樹木や雑草が生い茂り、近隣住人に不快感を与えてしまいます。また、動物の住処やごみ捨て場になることさえありえます。

空き家が増加していくと、集落の廃墟化が進んでいきます。そして、廃墟化が進んでいくと、買い手が付くことが難しくなりゴーストタウン化が進行していきます。誰もが廃墟化した集落に住みたくないからです。

さらに、不審者の侵入や犯罪が増加することも考えられます。

●倒壊や火災

建物は使わなくなると急速に老朽化していきます。日本の家屋は、木造が多く定期的に換気や掃除などをしないと、湿気により急速に老朽化していきます。

また、枯れ木や木は、燃えやすいことから火災の危険性があります。タバコのポイ捨て、何者かによる放火、ガス漏れ、配線器具の老朽化によって、火災が起こるリスクが高まります。

このような空き家の問題を解消するために、国は税制面で二つの対策を行っています。

また、これらの対策施行や空き家対策への意識の高まりにより、空き家増加率の予測値よりも2.5%ほど減少することができています。

しかしながら、この減少幅を加味しても以下の図が示している通り、対策なくして増加を減少させることはできません。

※空き家率の実績と予測(野村総合研究所引用)

空き家対策のために講じられた税制面での対策は次の通りです。

空き家放置で税金6倍に、強制取り壊しも

一つ目は、平成27年5月に施行された『空き家対策特別措置法』という法律です。

一定の条件に該当する空き家は、『特定空き家等』と認定され行政から除却(解体等)、修繕、伐採等の措置について、助言、指導、勧告、命令、強制執行が可能となりました。

さらに、勧告された場合は、固定資産税等の住宅用地特例を除外されることとなります。

通常の住宅用地は、200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に減額されているため、最大で現状の固定資産税の6倍もの税金が課税されることとなります。

空き家3000万円特別控除

不動産を売却した場合、利益部分に対して最大約40%の税金が課税されます。

亡くなった方の居住として使用していた家を相続し、相続日から起算して3年を経過する日の属する12月31日までに、以下の2パターンにいずれかに該当し売却した場合は、

●耐震リフォーム後に売却(耐震性がある場合は不要)

●取り壊し、更地での売却

家屋又は土地の譲渡所得から3000万円を特別控除することができます。

不動産を売却した際は、主に譲渡所得に気を付けることが必要です。特に、相続などで不動産の取得費がわからない場合は、多額の税金が発生する場合があるためです。

詳しくは、以下記事に記載していますので、ご参考にされてください。

空き家の活用方法

相続した空き家を活用する方法は、大きく3つのパターン『自ら利用』『売却』『賃貸』に分かれます。

自ら利用する場合を除いて、売却や賃貸では顧客(買主や借主)のニーズの大小や有無を見極めることが重要となってきます。

いくら所有者が貸して賃料を得たいと考えていても、そもそも相応の賃料を支払って借りたいというニーズがなくては、絵に描いた餅となってしまうからです。

自ら利用

空き家の利用法として、最初に上げられるのは、自ら利用するというパターンです。

簡易的なリフォームをして住むなどができれば、費用対効果が高い活用法となります。今のお住まいの家が賃貸であった場合は、毎月賃料が発生しているはずのため、毎月の支払料を大幅に減少させることが可能です。

また、大規模なリフォームをして住むことを検討する場合は、費用対効果を吟味する必要があります。建物の状況や家族構成等によっては、建て壊して新築を建築した方が長期的に視点から考えると効果的な場合があるためです。

売却する

次に上げられるのは、売却して手放すというパターンです。

多くの場合、空き家については相続前か相続後に売却することとなりますが、相続に絡む不動産の売却は、単独所有での売却と異なり、相続関係などの権利関係によって、思わぬ損失を被ることがあります。

また、税金についても注意が必要です。

貸す

最後に、第三者に『貸す』という方法です。建築基準法の規制緩和によって、以前よりも空き家の活用がしやすくなっています。

活用方法については、いくつかのパターンがあります。

また、対象となる空き家によって、最も最適な活用方法は異なるため、柔軟に比較検討していくことが大切です。

賃貸住宅

●簡易的なリフォームをして貸す

一戸建ての住宅は、簡易的なリフォームによって第三者に賃貸できる可能性があります。借り手が見つかれば、毎月の家賃収入が発生することが最大のメリットです。

賃貸住宅で貸し出す場合は、最低限の補修や改修が必要となります。ある程度築年数が浅い建物は、簡易的なリフォームのみで済むことが多いのですが、築年数が古い建物の場合、すでに雨漏りや水回りなどに支障が生じている建物もあります。

そのため、建物の状況によってどのくらいのリフォーム費用が必要になるかは、個別に診断する必要あります。

また、収入よりも支出が多くなれば、何のために貸し出しているのかがわからなくなってしまいますので、『借り手の需要』『リフォーム費用』『想定賃料額』とのバランスによって判断することが望ましいと言えます。

メリット

・初期コストが低く収まる

・毎月一定の賃料収入が発生する

・リフォーム費用は、経費に算入できる

・所有者に資産状況によっては、相続税対策となる

デメリット

・建物の管理コストが発生する

・空室リスクがある

●建て替えて貸す

ある程度古くなった建物の場合は、新しく建て替えて貸し出した方がメリットを享受できる場合があります。

例えば、建物外観や内装、設備等、一定のリフォームが想定される場合は、新築ほどの価格にならなくとも、それなりの費用が発生することなります。

一般的には、中古のリフォーム物件よりも、新築建物のほうが、賃料が高く設定されることが多く、入居者が決まりやすくなります。

また、長い期間、建物を貸し出すことができる点も新築のメリットと言えます。

以上の点から、建て替えて貸す場合は、『借り手の需要』『建て替え費用』『想定賃料額』の3つを分析し、収支をシュミレーションする必要があります。

収支が合う場合は、新築での賃貸も選択の一つとして検討余地があるのではないでしょうか。

ただし、将来的に売却が想定される場合は、リスクが伴うため慎重に分析が必要となります。売却時期などによっては、金銭的な損失となる場合があるからです。

メリット

・長期的に利用できる

・減価償却として経費に算入できる

・所有者に資産状況によっては、相続税対策となる

デメリット

・初期コストが高くなる

・空室リスクがある

更地にして貸す

●駐車場

駐車場としてニーズがあるエリアの場合は、更地にして、貸出すという選択もあります。

更地にするための解体費用等は必要となりますが、建物建築費用が発生しない分、初期コストが安く済みます。

なお、駐車の種類は、青空駐車場、月極駐車場、機械式駐車場などがあります。また、土地一括で貸し出す方法、月単位で貸し出す方法、時間制で貸し出す方法があります。

メリット

・初期コストが安く済む

・汎用性が高いため、一定のニーズがある

・売却しやすい

デメリット

・賃貸と比べて利回りが低くなりがち

・賃貸と比べると相続税対策効果が低い

●資材置き場、太陽光発電

資材置き場や太陽光発電は、比較的郊外のエリアで需要があります。

いずれの方法も一定の条件をクリアする必要がありますが、一般的な活用方法と比べると初期コストが安く済みます。

駐車場と同様に、利回りは高くありませんが、特に他の用途でのニーズがない場合などは検討に値します。

空き家を放置していても、支出だけが増えていくためです。

用途を変えて貸す

用途を変えて貸す場合は、前提として一定の法的な部分をクリアにしておく必要があります。これは、対象不動産によって、利用の用途に制限があるためです。

用途の制限においては、そもそも希望する使用用途が不可な場合と一定の要件を満たすことにより使用できる場合とがあります。

例えば、第一種低層住宅地域に店舗を建築することないことから、前者にのパターンに該当します。一方、第二種低層住宅地域では、150㎡以下などの一定の条件を満たすことができれば、店舗用途として利用することができます。

●民泊

民泊とは、戸建てやマンションなどを宿泊施設として貸出すことを言います。貸出すという点では、賃貸と同じなのですが、利用目的や該当する法律が異なるため、全くことなる仕組みや運営方法によってなされています。

2018年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、宿泊日数の制限(180日間)や帳簿の備え付けなど一定のルールが適用されることとなりました。

●宿泊施設

日本で宿泊施設を営むためには、『旅館業法』の許可を受けて営業する必要があります。

宿泊施設の種類は、旅館、ペンション、ホテルなどがありますが、旅館業法によって一定の条件が定められています。

民泊とは異なり宿泊日数の制限がないことが最大のメリットとなりますが、消防法や建築物、設備、避難経路等の規定から新たな設備や改修が必要となることがあり、民泊と比べると初期コストが高くつきます。

●その他の活用法

空き家の活用を促進するために、建築基準法などの法的規制を緩和するなどの対策が取られています。

例えば、100㎡を超える建物の用途を変更する場合は、『用途変更申請』を提出し許可を得る必要があります。しかし、この許可を得るためには、確認済書や検査済書が必要となり、空き家の用途変更が進まない要因となっていました。

特に築年数が古い建物は、確認済書などがないことが多く、仮に再作成するにも相当の費用と手間が発生し、可否次第ではリスクしか残らないという状態でした。

ところが、2019年に建築基準法の用途制限が100㎡から200㎡に緩和されたことにより、空き家を店舗や民泊施設、福祉施設や宿泊施設などへの転用がしやすくなりました。

そのため、空き家の場所や面積等によっては、以下の転用方法も考えられます。

●保育園

●店舗(喫茶店、カフェなど)

●福祉施設、(デイサービス、介護施設など)

なかには、国や自治体から税制や費用的な部分で優遇されるものがありますので、検討してみる価値は十分にあるものと思います。

まとめ

空き家の放置は、本人や社会的にもメリットがありません。今や社会問題の一つという位置づけになっており、税制が不利になるなどの具体的対策が取られています。

このまま空き家が増えていければ、さらに空き家放置への対処がきびしくなる可能性もあるのではないでしょうか。

いずれにしても空き家の放置は百害あって一利なしと言えるため、何かしらの活用方法を検討されてみてはいかがでしょうか。