不動産相続

家|相続した不動産売却の流れと注意点

家|相続した不動産売却の流れと注意点

不動産を相続した場合の売却には、通常の不動産売却と異なるいくつかの注意点があります。

相続した不動産を売却する方の中には、誰も住む人がいなくなったために売却するケースや不動産を現金に換えて相続人同士で分けたいというケースもあるでしょう。

相続不動産の売却については、不動産の分け方や不動産売却後の税金など気になる点も多いかと思います。

ここでは、相続した不動産売却の流れと注意点を詳しく解説します。

STEP1 遺産分割協議をする

相続した不動産は、亡くなった方の遺言で不動産の取得者が指定されている場合を除き、相続人全員の法定相続割合での共有となります。

そのため、遺言書がない場合は、遺産分割協議によって誰が不動産を相続するかを相続人全員で協議し決定する必要があります。

遺産分割協議書は、相続財産のすべてを相続人でどのように分けたかを明確にするものです。相続人全員で協議が決定すれば、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印を押印することで成立します。

なお、協議がまとまらない場合は、いつまでも相続人全員の共有状態のままとなります。

相続税の申告義務がある方は、相続開始から10カ月以内の申告期限までに行うことで、小規模宅地等の特例や配偶者控除等の有利な特例を受けることができます。

遺産分割協議書例(法務局より引用)

 

法務局が相続人が妻と子2人で遺産分割協議をし、相続財産中の不動産を子2人が相続した場合の遺産分割協議書の例がありますので、ご参考ください。

遺産分割協議書の例(法務局)

 

STEP2 家|不動産の相続登記をする

不動産の登記名義が、亡くなった方のままでは不動産を売却することができません。

したがって、遺産分割協議の決定をもとに、不動産の登記名義を不動産を取得する相続人へと変更します。これを相続登記といいます。

不動産の名義は単独(1人)か共有(複数)かの2種類に分けられます。

共有名義の場合は、単独名義に比べて売却が困難になることがありますので注意が必要です。

共有名義の場合は、共有者のうち1人でも反対者がいれば不動産を売却することができません。

したがって、共有者全員が売却に同意していることが大前提となりますが、売却価格や売却時期等についても共有者全員の足並みが揃わなければなりません。

また、不動産売却に必要な続きは、本人確認、印鑑証明などの書類提出、各契約書(売買契約書等)への著名押印、契約時の同席が必要となりますが、各名義人がそれぞれ行う必要があります。

共有者のなかで一人でも他県や海外にいる場合でも、同様の手続きを進めなければならないため、手続きが滞ってしまう場合があります。このため、せっかく購入したい人が出てきたとしても、契約が流れてしまうということも珍しくありません。

これは、買主側にも購入できるタイミングがあるためです。

通常、不動産の共有をおすすめする専門家はいないものと思われますが、やむ得なく共有になっている不動産の場合は、以下の方法で契約手間や滞りを解消することができます。

共有者の中から代表者を決め、不動産売却にかかる

●委任契約で代理の委任する方法

●家族信託で不動産管理や処分を委託する方法

があります。

いずれも共有者のなかで最も信頼ができる人に委託をすることによって、手続きの手間や滞りを解消することができます。

STEP3 不動産仲介業者へ売却の依頼する

相続不動産を売却する際は、一般的に不動産仲介業者へ依頼することとなります。

不動産の仲介業者は、それぞれに特色と得意、不得意がありますので、その点を見極めながら業者を選定すると良いと思います。

例えば、特定の地域に強い、戸建てやマンションに強い、事業用(土地、店舗・一棟、ビルなど)に強いと言った具合に特色があります。

また、相続に関わる疑問や懸念事項がなく、ただ売却できれば良いという状態であれば、売買を専門に取り扱う会社に依頼すると問題なく不動産を売却してくれるはずです。

一方、相続に関わる疑問や懸念事項がある場合は、不動産における一定以上の知識や経験、相続について横断的な知識を有する不動産コンサルタントに依頼すると良いでしょう。

不動産売却の部分だけでなく、様々な疑問や懸念事項を解決しながら相続に関わる問題事項を解消してもらえるはずです。

STEP4 不動産仲介業者と媒介契約を締結する

不動産仲介業者へ売却活動を依頼する場合は、媒介契約というもので売主と不動産会社との約束事を書面にて締結します。

この媒介契約は以下3つのパターンがあります。

大きな違いは、一般媒介は複数の不動産仲介会社に売却を依頼できるのに対し、専任媒介と専属専任媒介での売却依頼は、不動産仲介会社1社のみとなっている点です。

どの種類の媒介契約で依頼するかは、売主が不動産業者と話し合って取り決めることができますが、一般的に不動産仲介業者は、専任媒介契約を勧めることが多いものと思われます。

媒介契約と専任媒介契約どちらが良いかという判断は、個別の不動産、売主側と業者の事情によって異なります。これは、契約方法のそれぞれにメリットとデメリットが存在しているためです。

以下に、媒介契約の主な違いとメリットデメリットを記載していますので、ご参考にしてください。なお、専任媒介と専属専任媒介のメリットデメリットは大きなポイントに変わりはありません。

媒介契約の主な違い

●一般媒介契約(有効期間は制限なし)

①複数の不動産仲介会社へ売却の依頼ができる。

②不動産仲介業者の報告義務は任意となる。

※売主自ら発見した相手との取引は可

●メリット

複数の業者へ依頼ができるため、不動産業者間で競争が起こると同時に、早い段階で市場に物件情報が出回る。そのため、早い段階で物件の購入者が決まる可能性がある。

●デメリット

不動産売買サイトや雑誌などにに複数の業者が物件情報を掲載するため、買主側からみて一定期間以上を過ぎると、不人気物件、売れ残り物件などの憶測から不動産の希少性が損なわれる可能性がある。

専任媒介契約(有効期間は3カ月間)

①1社のみ不動産仲介会社へ売却の依頼ができる。

②不動産仲介業者は、2週間に1回以上の報告義務がある。

※売主自ら発見した相手との取引は可

●メリット

依頼した不動産仲介業者は、他の案件よりも優先して専任物件の営業に取り組むことができる。情報源が1社に限られるため、情報の混乱が起こりにくく、市場に応じて段階的に対応することができる。

●デメリット

不動産業者によっては、物件情報の囲い込みが行われる場合がある。また、一般媒介契約に比べて業者間での競争は起こりにくい。

専属専任媒介契約(有効期間は3カ月間)

①1社のみ不動産仲介会社へ売却の依頼ができる。

②不動産仲介業者は、1週間に1回以上の報告義務がある。

※売主自ら発見した相手との取引は不可

●メリットとデメリットは、専任媒介契約と大きな相違なし

STEP5 相続した家|不動産を売却する

不動産を売却するには、不動産が売却できる状態になっていなければなりません。

そのため、不動産仲介業者は、土地や建物と関連する法的に重要な部分について調査を行います。

なかでも相続した不動産の多くは、土地の境界線が曖昧なものが多いため、不動産売却時にトラブルなるケースが多々起こっています。

土地の境界を明確にするには、隣接の土地所有者同士が現地に立ち合いのうえで、境界確認に同意し、境界の確認書へ署名捺印をすることで成立します。

境界確定が完了すると現地に境界標を設置することができます。

よくあるのが、境界標が設置されておらず、敷地の境界が亡くなった方しかわからない場合です。隣地の所有者についても世代交代が進んでおり、当時の状況がわからないということがあります。

このようなことから、想定以上に境界を確定するまでの期間を要したり、近隣同士が納得できずに境界の確定が進まないということがあります。

敷地の境界確定ができない場合は、通常は不動産の売却ができません。新たな買主が不利益を生じることになるためです。

このような課題や問題をクリアにすることで、不動産が売却できる状態へと整っていきます。

そして、納得する条件(価格や引き渡し時期など)で買主が見つかれば、売買契約の手続きを進めることとなります。

物件引き渡しの決済日には、購入者から売買代金の支払いを受け、売主の銀行口座で入金が確認されたのち、所有権の移転登記や物件の引き渡しが行われます。

現金を相続人同士で分ける場合は、あらかじめ決められた遺産分割協議書によって、決められた割合で各相続人へ配分していきます。

代表者の口座へ売買代金が支払われ、各相続人に分配する場合は、贈与にあたらないようにするために、遺産分割協議書に従って分配する必要があります。

STEP6 確定申告・納税をする

相続した不動産を売却する場合は、分離課税といって他の給料などの所得とは別に計算する必要があります。

不動産を売却した場合は、譲渡所得は売却して出た利益に対して課税される譲渡所得税(住民税・復興特別所得税)と手続き時にかかる(印紙税・登録免許税)の大きく2種類の税金がかかってきます。

手続き時にかかる税金は売却時かかる費用のなかでも少額なうちに該当するため、そこまで気にする必要がないものと思われます。

しかし、譲渡所得税については想定以上に高額な税金が発生する場合がありますので、特に相続不動産については注意が必要です。

また、不動産売却によって生じた譲渡所得税は、翌年の確定申告にかかってきます。

相続不動産売却をする前に知っておきたいこと

相続税がかかるか否か

相続した不動産を売却する前に知っておきたいことの一つとして、相続税がかかるか否かとう点です。

相続税がかからない場合は、相続税の申告をする必要がありませんので、気にする必要はありません。

相続税がかかる方の場合は、相続開始後10カ月以内に相続税の申告と納税をする必要があります。

また、スムーズに進めていくためには、各相続人がどのくらいづつ納税をする必要があるのかを事前に把握しておく必要があります。

なかでも、相続した不動産を売却して納税資金に充当する場合は、なるべく早い段階で売却準備を進めることをおすすめします。

相続人の確定や遺産分割協議に時間がかかることに加え、不動産の売却も通常で3カ月以上かかり、長くなると半年以上の期間を要することがあるためです。

相続した不動産の税金をお得にする特例

不動産の売却時に課税される譲渡所得税については、さまざまな軽減方法があります。特例や控除は、併用・重複すると適用できないものがあります。

また、各適用条件に適合していなければ、各特例や控除を利用することができません。

特例を受けるためには様々な要件があり計算や手続きが複雑になっているため注意が必要です。

しかし、特例や控除が適用できれば、納税額を大きく減少することが可能なので、該当するものは必ず利用しましょう。

●居住用の物件→3000万の特別控除

居住用の家を売却した場合は、最大3000万円の特別控除を受けることができます。

国税局:マイホームを売ったときの軽減税率の特例

●所有期間が10年超の物件→軽減税率の特例

10年を超えて所有している家を売却した場合、税率が最大で14.21%にまで下がります。

●特定居住用の特例→買い替えの特例

居住用の家を買い替えした場合、一定の要件を満たすことで譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。

●相続した空き家→3000万円の特別控除

相続時から3年を経過する日の12月31日までに、被相続人の居住用の家を売却した場合、最大で3000万の特別控除を受けることができます。

国税局:被相続人の居住用財産(空き家)売ったときの特例

●相続財産→取得費加算の特例

相続により取得した不動産を亡くなった日から3年10カ月以内に売却した場合は、相続人が支払った相続税のうち、売却した部分の相続税が取得費に加算され、課税される税金が少なくなります。

国税局:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

まとめ

相続した不動産を売却するには、不動産売却だけでなく税金や特例・控除、相続と関連する手続きなどについても一つ一つを整理しながら進めていく必要があります。

また、思わぬところで時間がかかったり、手続きが進まないといった場合もありますので、早め早めの行動が大切です。

依頼する専門家のうち最低1人は、相続について横断的な知識を有する方を選定することをおすすめします。