不動産相続

家|不動産|相続対策の基本とポイント

家・不動産|相続対策の基本とポイント

相続対策と言えば、節税対策と思われる方もいるかもしれません。もしかすると、相続対策とは、賃貸アパートやマンションを建設することだと思っている方もいるもしれません。

しかし、これは間違いです。この誤りに気付かず結果として失敗や損失を招くような対策を進めていることがありますので注意が必要です。

ここでは、相続対策で最も重要な4つ原則と、相続対策をするメリットデメリットを解説します。

相続対策の4つの原則

相続対策を考えるうえで、最初に理解を深める必要があるのは、相続対策の全体像を把握することです。

なぜなら、相続対策の成否はこの4つの指標がカギを握っているからです。つまり、この4つの指標をバランス良く実現されることが『最も良い相続対策』と言えるのです。

したがって、相続対策を成功させるには、すべての対策がこの指標に沿って行われる必要があります。

このどれか一つが欠けてしまっても良い相続対策とは言えません。

例えば、相続税対策で賃貸アパートやマンションを建設し、大きく相続税が節税できたとしても、余計に分割対策で揉めてしまう、納税資金が足りない、空室が埋まらず資金が流出してしまう・・といったことになっては、結果として損失をもたらすこととなります。

このように、偏った相続税対策を行ったことにより、余計に事態を悪化させるケースが散見されます。

一般的に、『分割対策』『納税対策』『節税対策』を相続対策の3原則と呼ばれています。

不動産の所有者は、この原則に加えて『経済価値対策』が必要です。なぜなら、不動産の利用法や活用法のいかんによって、一家全体の資産増減に大きく影響を及ぼすからです。

また、相続対策では、『分割対策』で揉めないことを前提にすべてが組み立てなければ、なりません。

相続対策に失敗の多くは、全体を把握していないことから起こる失敗であると推察されます。したがって、この全体的視点をもってバランスを考えながら実行していくことが最も大切なのです。

分割対策

分割対策では、もめないように遺産を分ける対策を考えます。

相続が発生すると亡くなった方のすべての資産を洗い出し、相続人同士でどのように財産を分けるのかを決めなければなりません。この分割方法を相談することを遺産分割協議といい、相続人全員の同意が必要となります。

相続人のうち誰か1人でも合意できないと、遺産分割協議が進まず、余計な手続きや費用が生じたり、優位な特例や控除が使えないなどの弊害や不利益を被ります。

相続人同士がもめてしまっては、亡くなられた方の想いも浮かばれないばかりでなく、残された相続人同士も憎しみ合うこととなります。また、時間的や経済的にも損失だけでなく、家族間の関係性が壊れるなど感情的な損失を被ることとなります。

●『紛争』を予防し『円満』を目指す。

納税対策

納税対策では、相続税が発生する場合に納税資金を確保する対策を行います。

相続税は、亡くなった日から原則として10カ月以内に申告と納税をしなければなりません。

いざ相続が起こってから納税資金が足りないという事態に陥る前に、あらかじめ対策を講じていくことが必要です。

相続税は原則として現金一括納付となっています。したがって、納税資金が足りないときは、不動産を売却し現金に換え納付するなどが必要となります。

ただし、不動産売却の期間は平均3カ月~6カ月ほど必要です。不動産によっては6カ月以上の期間を要することがあります。また、売り急ぎの場合は、一般的な市場価格よりも安くなりますので、なるべく早い段階で方向性を決めることが望まれます。

●相続後、不動産売却の注意点

・売却物件も相続税の課税対象となる。

・小規模宅地の特例が受けれななくなる。

・譲渡益が生じる場合は、譲渡所得が発生する。

・売却物件の相続登記が必要である。

・遺産分割協議書が必要となる。

・共有名義は、全員の同意が必要

●納税資金の『不足』を解消し、『潤沢』を目指す。

税金対策

税金対策では、節税対策を考えます。

可能な限り様々な特例や控除を利用するのはもちろんのこと、土地、建物、保険、株式、贈与、税金などにおいて、節税対策のバリエーションは少なくとも50種類以上の手法が考えられます。

相続対策は大きく2種類に分けられます。一つは、その対策のみで完結するもの。

二つ目は、その対策によって芋づる式のように他の対策に影響を与えるものです。

特に不動産に関わる対策は、4つの指標すべてに影響を与えるため権利関係や税務など全体的な影響を考慮しながら、実行する必要があります。

また、一つの対策においても各専門領域と関連し合うため、各専門家の確認や助言等を得ながら進めていく必要があります。

●相続税の『多税』を解消し、合法的に『節税』を図っていく。

経済価値対策

経済価値対策では、不動産資産の色分け(優良資産・不良資産)します。

有効に活用されず固定資産税や維持費による支出が多い不動産は、不良資産に該当します。このような不動産は、積極的に利用や活用するなどによってプラスの収支になるように改善するか、売却するなどを検討します。

また、人口縮小エリアに所在する不動産の場合、長期的に不動産の資産価値が減少することも想定されます。

そのような不動産は、思い切って売却し資産価値が下がりにくい、もしくは、資産価値が上がっていくと思われる優良な不動産に組み替えていくなどの方法も考えられます。

・不動産資産を整理し、優良資産に変えていく。

相続の紛争を予防するポイント4つ

相続対策では、第一に紛争や不利益を予防することが大切です。

効率的に何に気を付ければいいかを知るには、相続で過去に陥った多くの失敗や後悔から学び生かすことが考えられます。

今となっては、あらゆる事例や情報源があり相続に関わる失敗や後悔を知ることができるからです。

相続財産の半数が不動産、高齢者の8割が持ち家

相続財産の半数は不動産となっています。さらに、高齢者の8割は、持ち家を所有しています。

●相続財産の金額の構成比推移

※国税局より引用→平成28年分の相続税の申告状況について|国税庁 (nta.go.jp)

不動産は、相続税対策で最も大きな効果をもたらす一方で、相続財産の割合が多く、現金に比べて分けづらい不動産は、何をするにしても時間がかかるのに加え、一気に話が難しくなります。

そのため、不動産所有者にとっての相続対策とは、不動産対策であると言っても過言ではありません。

したがって、多くの場合、不動産相続問題の解決は、相続問題の大部分を解決することを意味します。

以下、不動産相続でもめやすいポイントをまとめていますので、ご参考にしてください。

●不動産相続でもめやすいポイント

・自宅不動産

・不動産共有

・相続未登記

・土地の敷地境界

・不動産の分け方

・不動産の評価方法

・賃貸物件

多くの家は遺産の分け方でもめている

相続関係で家庭裁判所に相談する件数は、年々増加しています。さらに遺産分割の事件数は年々増加しています。

遺産分割でもめてしまうのは、前提として家族間のコミュニケーション不足が起因しています。なぜなら、相続人全員が納得さえしていれば遺産の分け方でもめることはありえないからです。

例えば、生前から相続についての話し合いが行われていない場合は、相続後に起こる紛争リスクが高くなることは明らかです。

有効な遺言書もなく、相続人同士で紛争が生じてしまった場合は、家庭裁判所で遺産の分割を決めることとなります。

遺産の分け方では、法的な部分だけでなく各人の感情的な気持ちの部分も大切となってきます。以下、遺産の分け方でもめやすいポイントをまとめていますので、ご参考にしてください。

●遺産の分け方でもめやすいポイント

・不平等な分け方

・相続財産を使い込んでいる

・前妻の間に子供いる場合や隠し子が判明

・内縁の配偶者がいる

・同居し介護をしている相続人がいる

・子供がいない夫婦

・事業承継問題

・家族の関係性やコミュニケーション不足

高齢化による認知症トラブルが増加している

認知症患者数は、年々増加しており、65歳以上の約20%が認知症になると見込まれています。また、年齢とともに認知症リスクは高まり、90歳時には約65%の方が認知症となっています。

●年齢階級別の認知症有病率

※厚生労働省より引用→サイト内検索結果|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

認知症になってしまうと相続対策をすることができません。なぜなら、認知症が発症すると意思能力がないと判断され契約などすべての法律行為が無効になるためです。

認知症初期段階における意思能力の有無については、判断が分かれることもあるようですが、司法書士や医師による確認は必須となります。

人の寿命は誰にもわかりません。認知症が発生してからすぐに亡くなることもありますが、5年、10年、20年といった具合に、ご長寿を全うされる方もいます。このような場合は、非常に長い期間、財産がデットロック状態に陥ることなります。

以下、認知症で困る具体例を記載していますので、ご参考にしてください。

●認知症で困る具体的例

・相続対策ができない

・不動産売却、利用、活用ができない

・遺言書が書けない

・生前贈与ができない

・口座が凍結される

・親の介護など寄与分

・賃貸物件の運用や利用

・生命保険の加入、解約

・遺産分割協議への参加

一家の一大プロジェクトとして考える

相続対策は、一家の一大プロジェクトとして考えることが大切です。

私たちは、生まれてから死を迎えるまでに、人生の転機となるライフイベントを経験します。それは、誕生、学校、就職、結婚、出産、住宅購入、退職、介護、死、葬儀など人生に大きく影響与えるものです。

家というのは故人が亡くなっても存続していきます。もし、結婚をしていない方でも兄弟関係など最も近しい血縁は脈々と未来に続いていきます。

個から家という視点でライフイベントを考えた場合、相続対策は、相続人同士という血縁や関係性が最も近い人たちと行う、すべてイベントにおける集大成であると言えるのはないでしょうか。

相続における家の行く末は、相続人の幸か不幸、家や一族の繁栄と衰退を大きく分ける重要な分岐点となります。

そうだとすると、相続対策は一家の一大プロジェクトとして位置づけて今後の家の行く末を決める重要な事柄だと言えるのです。

そして、このプロジェクトを成功に導くには、一家におけるリーダー的な存在となる人が必要です。このリーダーは必ずしも親や長男と長女である必要はありません。

家庭によっては、次男や三男、二女や三女が率先して対策を進めていく場合もあります。

大切なのは家全体の幸せや繁栄を強く願い、想い、実現するという気持ちに他ならないからです。

相続対策をするメリットとデメリット

●相続対策をするメリット

家全体の資産流出を防ぎ、資産形成の健全化が進む

世界と比べても日本の相続税率は高いと言われ、最高税率は55%となっており、12人に1人の割合で相続税が発生しています。

このため何もしなければ、相続が起こると一家全体の資産は大きく減少します。

しかし、相続対策を機にむしろ一家全体の資産が増加する場合があります。これは、本質的に経済価値対策と資産形成が表裏一体の性質をもつからです。

なぜなら、相続対策は、いかに円滑に資産を次世代に引き継ぐかを考えることでもあり、次世代を見据えて、資産を再構築することでもあるからです。

つまり、相続を見通した家の資産形成ということとなります。

したがって、相続対策を進めていくにつれ資産流出を防ぎ、不良な資産の改善が進むなど家の資産形成の健全化が進んでいきます。

家内安全、家庭円満、子孫繁栄に貢献できる

相続対策は、次世代への想いやりによって行われると言っても過言ではありません。なぜなら、人は面倒くさいことをするのが嫌なはずだからです。

つまり、相続対策を行うには、一家の誰かが面倒くさいことを上回るだけの意味を見出さなければなりません。

神社へ行くと家内安全や家庭円満、子孫繁栄などの願いごとが祈願されています。そして、誰一人として本当に、家内問題、家庭紛争、子孫衰退を望んでいる人はいないのではないでしょうか。

相続対策の成功は、家内安全や家庭円満、子孫繁栄を意味します。反対に、相続での失敗は、家内問題、家庭紛争、子孫衰退が起こることを意味します。

また、祖先にも一家に対し同様の想いがあるとすれば、相続対策の成功は祖先の想いを成就させることでもあるのではないでしょうか。

●相続対策のデメリット

勉強の必要性や時間とエネルギーが必要

相続対策のデメリットは、誰かが相続や不動産に関わる勉強をする必要があることです。

専門家や業者へ依頼した場合であったとしても、少なくとも最低限の知識や情報が必要です。なぜなら、家や家族のことを一番知り、最終的な意思決定をするのは他でもなく本人しかいないからです。

また、『馬を水辺に連れて行けても、水を飲ませることはできない』という言葉の通り、いくら専門家が遺言書を進めても、本人に遺言書を書く気がなければ、どうすることもできません。

相続対策は1日でできることもあれば、1カ月以上から1年以上の時間を必要する対策もあります。保険の加入や解約と異なり、不動産に関わる対策は必然的に一定の期間を要します。また、状況によっては、家族の説得を必要とする場面もあるでしょう。

このようなことから、少なくとも最低限の知識を学ぶこと、そして、相続対策を実行するには一定の時間とエネルギーが必要となります。

相談相手によって効果に差が出る

相続対策は、相談相手によって効果に大きく差が出ます。

なぜなら、相続対策におけるコンサルティングは、洋服や車などのように目に見える商品と異なり、目には見えない部分によるところが大きいためです。

目には見えない部分というのは、知識や知恵、情報の質や量、ネットワークの質や量などがあります。また、これらは商品比較のように安易に比べることができません。

また、そもそも相談相手を間違っている場合も相談者の求める答えを得ることができず、偏向した知識や情報によって、むしろ悪化してしまうこともあります。

加えて、誰にとっても原則的な部分は同じだとしても、相談者によって『最善の答え』は異なります。

例えば、Aさんにとって、aという答えが最善だとしても、Bさんにとって、aという答えが最善だとは限りません。つまり、10人いれば10通りの最善を導かなければならず、答えを考えなければならないのです。

このように相談相手によって、効果に大きく差が生じてしまうため、慎重に適切な相談相手を選ぶ必要があります。