不動産相続の評価と計算方法
相続財産の評価は、相続開始時点の時価で評価されます。つまり、故人が亡くなった日の時価で評価されることとなります。
相続財産のうち現金については、その金額のまま評価されることとなりますが、不動産の評価は、一定の方法により計算されることとなります。
相続土地の評価方法
土地の評価方法は路線価方式と倍率方式のどちらかで評価します。どちらの評価方式になるのかは、相続土地の所在地によって異なります。
路線価とは、その道路に面する土地1㎡あたりの評価額のことで、国税局のホームページで所在地の路線価を確認することができますので、所在地を調べてみてください。
※国税局ホームページ→https://www.rosenka.nta.go.jp/
路線価方式に該当する場合
●路線価図の見方サンプル
※国税局路線価説明より引用
相続土地の所在がわかれば、道路に数値が記載されています。この数値は、千円単位のため以下サンプルの場合1㎡あたり300,000円となり、700㎡の面積がありますので、相続評価額は2億1千万円となります。
なお、相続土地の面積については、登記簿謄本で確認をします。
●路線価方式の計算式
路線価×土地の面積=土地の相続税評価額
●路線価図の詳細見方サンプル

倍率方式に該当する場合
全国のすべてに土地の路線価が設定されているわけではありません。路線価が設定されていない場所については、倍率方式によって相続税評価額を計算することとなります。
倍率方式に該当する場合は、路線価図の道路に矢印と数字の記載がありません。この場合、国税局ホームページから市町村の倍率方式を検索し該当するエリアを特定します。
●倍率方式の見方サンプル

※国税局倍率方式の説明より引用
倍率方式の場合、固定資産税評価額をもとに一定の倍率をかけることで相続税評価額を計算することとなります。
●倍率方式の計算式
土地の固定資産税評価額×倍率=土地の相続税評価額
土地の固定資産税評価額が1億円で倍率方式が1.1倍の場合、相続税評価額は11000万円となります。
補正がかかる土地
路線価と土地の面積がわかれば、およそ土地の相続税評価額がわかりますが、実際の評価には、様々な補正がかかることがあります。
●不動産評価に補正がかかるケース
□二つ以上の道路に接する土地
□間口に対して奥行が長すぎる土地
□道路に接していない土地
□不整形地(三角地など整っていない土地)
□斜面を含む土地
□広大な土地
土地を貸している場合の評価方法(貸宅地)
相続土地を自己利用している場合は、『自用地』といいます。そして、相続土地を第三者へ貸している場合は、『貸宅地』といいます。
自用地に比べ、貸宅地の場合は、相続税評価額がさらに下がります。これは、土地の権利の一部が第三者にあると考えられるからです。
●貸宅地の相続評価額の計算式
自用地評価額×(1-借地権割合)=貸宅地の相続税評価額
自用地評価額は、路線価方式か倍率方式で求められ価格となります。また、借地権割合は、『●路線価図の見方サンプル』の右上に記載される借地権割合の数値を適用します。
例えば、借地権割合が70%で、自用地評価額が2億1千万円の場合、2億1千万×(1-0.7)となり、貸宅地の相続税評価額は6300万円となります。
土地を借りていた場合の評価方法(借地権)
第三者から土地を借りて、自宅、店舗、事務所等を建てていた場合は、借主はその借地権についても相続財産に含まれ、相続税が課税されます。
●借地権評価の計算式
自用地評価額×借地権割合=借地権の相続税評価額
自用地評価額は、路線価方式か倍率方式で求められ価格となります。また、借地権割合は、『●路線価図の見方サンプル』の右上に記載される借地権割合の数値を適用します。
例えば、借地権割合が70%で、自用地評価額が2億1千万円の場合、2億1千万×0.7となり、借地権の相続税評価額は1億4700万円となります。
賃貸物件が建っている土地の評価方法(貸家建付地)
所有者している土地と建物に貸家・アパート・マンションなどがある場合は、その土地を『貸家建付地』と言います。
なお、この土地と建物の所有者が異なる場合や、賃貸建物を無償で貸している場合は、貸家建付地に該当しません。
●貸家建付地評価の計算式
自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家の相続税評価額
借家権割合は、原則30%となっています。また、賃貸割合とは『評価時点で賃貸をしている面積割合』のことを言います。この面積割合は、部屋数で計算するのではなく専有部分の床面積で計算することなりますので注意が必要です。
例えば、自用地評価額が1億円、借地権割合が70%、借家権割合が30%、
空室だらけの賃貸建物【賃貸割合が20%】
1億円×(1ー0.7×0.3×0.2)=9580万円
満室の賃貸建物【賃貸割合が100%】
1億円×(1ー0.7×0.3×1)=7900万円
以上のシュミレーションの場合、相続税評価額に1680万円の差が生じてしまいます。このように、空室状況で賃貸割合が変わることで相続税評価額が大きく変わりますので、注意をしてください。
また、建物部分についても賃貸割合の影響がありますので、生前のうちから空室対策に力を入れ取り組んでおくことをおすすめします。
相続建物の評価方法
所有している土地に建物がある場合も一定の計算によって相続税評価額を計算します。
建物は、家(自宅)のように自らが利用している場合と、賃貸マンションのように第三者に賃貸している場合とで計算方法が異なります。
家(自宅)の評価方法
家(自宅)の相続税評価額は、建物の固定資産税評価額がもとになります。
建物の固定資産税評価額×1.0=家(自宅)の相続税評価額
そのため、相続した家(自宅)は固定資産税評価額がわかれば、建物の相続税評価額もすぐにわかります。
賃貸建物の土地の評価方法 (貸家建付地)
貸家・アパート・マンションなどの賃貸建物の相続税評価方法は以下の計算で行います。
●賃貸建物評価の計算式
建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)=建物の相続税評価額
借家権割合は、原則30%となっています。また、賃貸割合とは『評価時点で賃貸をしている面積割合』のことを言います。この面積割合は、部屋数で計算するのではなく専有部分の床面積で計算することなりますので注意が必要です。
例えば、満室稼働であれば100%、半数が空室であれば50%ということなります。
また、賃貸割合の計算上、満室の賃貸建物に比べ空室だらけの賃貸建物の方が、相続評価額が割高になります。
例えば、賃貸マンションが3億円の固定資産税評価額、借家権割合が30%とし、以下の条件で相続税評価額を比較してみます。
空室だらけの賃貸建物【賃貸割合が20%】
3億×(1ー0.3×0.2)=28200万円
満室の賃貸建物【賃貸割合が100%】
3億×(1-0.3×1)=21000万円
以上のシュミレーションの場合、相続税評価額に7200万円の差が生じてしまいます。このように、空室状況によって相続税評価額が大きく変わりますので、注意をしてください。